• LIVE DVD「真昼のストレンジランド」オフィシャル・レビュー

    LIVE DVD GRAPEVINE tour2011「真昼のストレンジランド」

     グレイプバインの11作目『真昼のストレンジランド』は、彼等が新しいフェイズに進んだことを示す力作だ。ライト・ノヴェルのように親しみやすい言葉で純文学並みの深みを描き出す歌詞と、広い地平を描き出す柔軟にしてタフな演奏が、脳裏に様々な光景を描き出す。『真昼のストレンジラン ド』とは、田中和将((Vo,G)によれば「自分の中にある異境、あるいは異境のどこかで自分みたいな人間が動いているイメージ。全体に白日の下に晒されているような曲が多い」ということから付けられたアルバム・タイトル。特にコンセプトはないそうだが、曲それぞれのイメージが自然と繋 がって、オムニバス映画のように物語を紡ぎ出す作品となっている。
     グレイプバインのライヴは本当に毎回、こんなバンドだったかと目から鱗が落ちる常に発見があり、いい意味で裏切ってくれるが、このツアーでは一段と驚きと感動を与える内容になっていた。明るさを抑えた幻想的な照明が曲のイメージを膨らませ、完璧なバランスで音が響き渡る。曲が進むほどに彼等のダイナミックな演奏に引き込まれ、軽いトランス状態になるほど。中盤で圧倒的な展開を見せる「411」をはじめとする新曲は当然として、それらの間に、例えば「冥王星(’08年のシングル「ジュブナイル」収録)などマニアックな曲も、違和感なく織り込まれる。何処までも広がるサウンドスケープに、息をのまずにいられない。
     このツアーは3月5日から始まり、ここに収録された4月23日の新木場スタジオ・コーストでフィナーレを迎えるはずだったが、3月11日に起きた大震災のため仙台や盛岡での公演が延期となり、この後もツアーは続いた。「皆さんの物語は続いています」と田中が幕開けに語りかけるのが、このツアーでは定番になっていたが、彼等の物語も続いていたのだ。そして、この日のライヴには様々な理由でツアーを見ることが叶わなかった人たちへ届けたいという思いがこもっていたのではないだろうか。
     同梱のツアー・ドキュメントが、ここに至までの道程を追っている。移動し演奏し飲み眠り旅する中で、彼等は自分たちを鍛え楽しませ進み続ける。音楽を生業とした人たちの地道な日常は、案外地味なものだ。けれど新しい音楽がここからまた生まれる。グレイプバインが惜しみなく素顔も見せたこのツアーとライヴの記録は、作品毎に高みを目指し、数えきれないほどのライヴを重ねて進み続けている、このバンドの生命力に改めて脱帽したくなる映像作品となった。

    TEXT 今井智子

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    *一部記述訂正しました


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